老猫(高齢猫・シニア猫)は何歳から?愛猫が快適に過ごすための生活環境と健康の注意点

猫は一般的に7歳頃からシニア期に入り、年齢を重ねるごとに特別な配慮が必要です。愛猫がいつまでも快適で幸せに過ごせるための知識と、適切なケアでより長く充実した時間を共に過ごせる情報をご紹介します。
老猫は何歳から?愛猫の加齢サインを知ろう

愛猫との暮らしの中で、いつから「老猫(高齢猫・シニア猫) 」と呼ぶべきか、その基準が気になる飼い主様も多いのではないでしょうか。猫の寿命が延びている現代において、老猫の定義を知り、早期に加齢のサインに気づくことは、愛猫が快適に老後を過ごすために非常に重要です。一般的に、猫は7歳頃からシニア期に入ると言われていますが、個体差が大きいため、愛猫の行動や見た目の変化を注意深く観察することが大切です。
猫の年齢を人間の年齢に換算すると
猫の年齢は人間よりも早く進みます。特に成長期は急速で、その後は緩やかになるのが特徴です。猫の年齢を人間の年齢に換算することで、愛猫が今どのくらいの「人生」を歩んでいるのか、おおよその目安を把握することができます。以下に一般的な換算表を示します。
猫の年齢 | 人間の年齢(目安) |
---|---|
生後6ヶ月 | 約10歳 |
1歳 | 約18歳 |
2歳 | 約24歳 |
3歳 | 約28歳 |
4歳 | 約32歳 |
5歳 | 約36歳 |
6歳 | 約40歳 |
7歳 | 約44歳 |
8歳 | 約48歳 |
9歳 | 約52歳 |
10歳 | 約56歳 |
11歳 | 約60歳 |
12歳 | 約64歳 |
13歳 | 約68歳 |
14歳 | 約72歳 |
15歳 | 約76歳 |
16歳 | 約80歳 |
17歳 | 約84歳 |
18歳 | 約88歳 |
19歳 | 約92歳 |
20歳 | 約96歳 |
この換算表はあくまで目安であり、猫種や個体差、生活環境によって健康状態や老化の進行度は異なります。大切なのは、数字だけでなく、愛猫自身の変化に気づくことです。
愛猫が老猫になったサインと変化
猫の老化は、見た目だけでなく行動にも様々な変化として現れます。日頃から愛猫をよく観察し、小さなサインも見逃さないようにしましょう。これらの変化は、病気のサインである可能性もあるため、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
見た目の変化
- 毛並み・被毛の変化: 毛艶が失われ、パサついたり、フケが出やすくなったりします。白髪が目立つようになることもあります。グルーミングの頻度が減り、毛玉ができやすくなることもあります。
- 目: 目に白っぽい濁りが見られる場合は白内障の可能性があります。目やにが増えたり、涙が出やすくなったりすることもあります。視力が低下すると、物にぶつかったり、段差につまずいたりすることが増えます。
- 歯・口: 歯石がつきやすくなり、口臭が強くなることがあります。歯周病が進行すると、歯が抜けたり、食欲不振につながったりします。口の周りを気にする仕草や、食べにくそうにする様子も見られます。
- 体重: 筋肉量が減少し、痩せ細る傾向が見られることがあります。一方で、活動量の低下により太りやすくなる猫もいます。急激な体重の変化は病気のサインである可能性も高いため注意が必要です。
- 爪: 爪とぎの頻度が減り、爪が伸びすぎて巻いてしまったり、肉球に食い込んでしまったりすることがあります。爪がもろくなることもあります。
- 皮膚: 皮膚が乾燥しやすくなったり、弾力が失われたりします。イボやしこりのようなできものが見つかることもあります。
行動の変化
- 睡眠時間の増加: 一日の大半を寝て過ごすようになり、以前よりも活発に動く時間が減ります。深い眠りにつくことが多くなるのも特徴です。
- 活動量の低下: 高いところにジャンプしなくなったり、階段の昇り降りを嫌がったりするなど、運動量が明らかに減ります。遊びに対する興味も薄れ、寝てばかりいることが増えます。
- 食欲の変化: 食欲が落ちて食べる量が減ることもあれば、逆に食欲が増して肥満になることもあります。食べ物の好みが変わることもあります。
- 飲水量の変化: 腎臓病などの病気の影響で、水を飲む量が増えることがあります。脱水症状を起こしやすくなるため、飲水量の確保がより重要になります。
- 排泄の変化: トイレの失敗が増えたり、トイレの回数が多くなったりすることがあります。便秘や下痢を繰り返すこともあります。関節の痛みから、トイレの縁をまたぐのが辛くなることもあります。
- グルーミングの減少: 体が硬くなったり、関節が痛んだりすることで、毛づくろいが億劫になり、毛並みが乱れることがあります。届きにくい場所の毛づくろいをしなくなることもあります。
- 性格の変化: 以前よりも穏やかになり、甘えん坊になる猫もいれば、逆に些細なことで怒りっぽくなったり、触られるのを嫌がるようになったりする猫もいます。分離不安の症状が見られることもあります。
- 鳴き声の変化: 以前よりも大きな声で鳴くようになったり、夜中に徘徊しながら鳴き続けるなど、鳴き方が変わることがあります。これは認知症のサインである可能性もあります。
- 認知機能の低下: 部屋の隅でじっと動かなくなったり、徘徊したり、見慣れた場所で迷子になったりすることがあります。夜鳴きや昼夜逆転なども認知症のサインとして挙げられます。
これらのサインは、愛猫が老齢期に入ったことを示す大切なメッセージです。変化に気づいたら、適切なケアと環境調整を始める良い機会と捉えましょう。
老猫が快適に過ごすための生活環境の注意点

食事と栄養の注意点
シニア用フードへの切り替え
愛猫がシニア期に入ったら、年齢に合わせたシニア用フードへの切り替えを検討しましょう。シニア猫は消化吸収能力が低下し、活動量も減るため、肥満になりやすくなります。シニア用フードは、消化しやすく、低カロリーでありながら必要な栄養素(良質なタンパク質、ビタミン、ミネラルなど)をバランス良く含んでいます。また、関節の健康をサポートするグルコサミンやコンドロイチン、脳の健康維持に役立つDHA・EPAなどが配合されているものを選ぶと良いでしょう。
フードを切り替える際は、急に変えると消化器に負担をかける可能性があるため、これまでのフードに新しいフードを少しずつ混ぜながら、1週間から10日ほどかけて徐々に移行させるのが理想的です。
飲水量の確保と工夫
老猫は腎臓病などのリスクが高まるため、十分な水分摂取が非常に重要です。脱水症状を防ぎ、尿路結石や腎臓病の予防にも繋がります。飲水量を増やすための工夫をいくつかご紹介します。
- 水飲み場の増設と配置: 家の複数箇所に水飲み場を設置し、猫がいつでも水を飲めるようにしましょう。特に、食事場所や寝床の近く、よく通る場所に置くと効果的です。
- 新鮮な水への交換: 水は毎日新鮮なものに交換し、器も清潔に保ちましょう。猫は匂いに敏感なので、汚れた水や器では飲まないことがあります。
- 器の素材と形状: プラスチック製の器は匂いがつきやすい場合があるため、陶器やステンレス製の器を試してみましょう。また、ヒゲが当たらないように口の広い平らな器を好む猫もいます。
- 循環式給水器の利用: 流れる水に興味を示す猫もいるため、循環式給水器(ファウンテン)の導入も有効です。
- ウェットフードの活用: ドライフードだけでなく、水分含有量の多いウェットフードを食事に取り入れることで、自然と水分摂取量を増やすことができます。
食欲不振への対策
老猫になると、嗅覚や味覚の衰え、歯のトラブル、消化機能の低下、あるいは病気などにより食欲が落ちることがあります。食欲不振は体力低下に直結するため、早めの対策が必要です。
- フードの温め: フードを少し温めることで香りが立ち、食欲を刺激することがあります。ただし、熱すぎないように注意しましょう。
- 嗜好性の高いフードの活用: 猫の好みに合わせて、ウェットフードやパウチタイプ、または特定のフレーバーのフードを試してみましょう。
- 食事回数を増やす: 一度に食べられる量が減るため、1日の食事量を数回に分けて与えることで、総摂取量を確保しやすくなります。
- 食事環境の見直し: 静かで落ち着ける場所で食事をさせ、食器の高さや素材も猫が食べやすいものを選びましょう。
- 動物病院での相談: 食欲不振が続く場合は、何らかの病気が隠れている可能性もあります。早めに動物病院を受診し、獣医師に相談することが重要です。
トイレ環境の注意点
老猫になると、足腰が弱くなったり、トイレに行く回数が増えたりすることがあります。快適な排泄環境を整えることで、粗相を防ぎ、ストレスを軽減できます。
トイレの配置と数を増やす
老猫は移動が億劫になることがあるため、トイレは家の複数箇所に設置し、猫がアクセスしやすい場所に配置しましょう。特に、よく過ごす場所や寝床の近くに置くと良いでしょう。推奨されるトイレの数は「猫の頭数+1個」ですが、老猫の場合はさらに数を増やしたり、各フロアに設置したりすることも検討してください。静かで人通りの少ない場所に設置し、猫が安心して排泄できる環境を整えることが大切です。
トイレの形状や段差の工夫
足腰が弱くなった老猫にとって、通常のトイレの縁の高さは負担になることがあります。トイレの形状や段差を見直すことで、猫が楽に利用できるようになります。
- 入り口の低いトイレ: 縁の低いシニア猫用トイレや、子猫用のトイレを代用するなど、猫がまたぎやすい高さのトイレを選びましょう。
- 広めのトイレ: 体の向きを変えたり、排泄姿勢をとったりしやすいよう、従来のトイレよりも一回り大きいサイズのトイレを検討するのも良いでしょう。
- 清潔さの維持: 老猫は匂いに敏感になる傾向があるため、トイレはこまめに掃除し、常に清潔に保つことが非常に重要です。汚れたトイレでは排泄をためらってしまうことがあります。
寝床と休息場所の注意点
老猫は若い猫に比べて寝る時間が長くなり、体温調節能力も低下します。関節痛を抱えている場合も多いため、快適で安全な寝床と休息場所を提供することが大切です。
暖かく静かで安全な場所の確保
老猫は寒さに弱くなるため、暖かく過ごせる場所を確保しましょう。日当たりの良い場所や、エアコンの風が直接当たらない場所が理想的です。冬場はペット用ヒーターや毛布などを活用し、体を冷やさないように工夫してください。また、人通りが少なく、他のペットや家族に邪魔されずにゆっくり休める静かな場所を選びましょう。高い場所からの落下や、思わぬ事故を防ぐため、安全な環境を整えることも重要です。
関節に優しいクッションやベッド
老猫の多くは関節炎を患っている可能性があり、硬い場所で寝ると痛みを増すことがあります。柔らかく、体をしっかり支えるクッション性のあるベッドを用意してあげましょう。
- 低反発・高反発素材: 体圧を分散してくれる低反発素材や、沈み込みすぎずに体を支える高反発素材のベッドがおすすめです。
- 厚みのあるクッション: 床からの冷気を遮断し、体を優しく包み込むような厚みのあるクッションやマットを選びましょう。
- 保温性の高い素材: フリースやボアなど、保温性の高い素材のベッドは冬場の寒さ対策にもなります。
- 出入りのしやすさ: 足腰の負担を考慮し、縁が低く、猫が簡単に出入りできる形状のベッドを選びましょう。
運動と遊びの注意点
老猫になっても、適度な運動と遊びは心身の健康維持に不可欠です。無理なく楽しめる方法で、活動量を維持してあげましょう。
無理のない運動で筋力維持
筋力の衰えは、転倒や関節への負担増加に繋がります。しかし、無理な運動はかえって体に負担をかけるため、猫のペースに合わせた運動を心がけましょう。短い時間で頻繁に行うのがポイントです。
- 軽いおもちゃでの遊び: 猫じゃらしやレーザーポインターなど、猫が体を大きく動かさずに楽しめるおもちゃで遊びましょう。猫が疲れない程度に、数分間を1日に数回行うのが理想です。
- おやつを使った誘導: おやつを使って、数歩歩かせたり、低い段差を上り下りさせたりするのも良い運動になります。
- 階段や高い場所の制限: 足腰が弱っている場合は、階段の昇り降りや高い場所へのジャンプは避けさせるか、補助してあげましょう。
認知症予防のための遊び
老猫の認知症予防には、脳に適度な刺激を与える遊びが有効です。知的好奇心を刺激し、思考力を維持する工夫を取り入れましょう。
- 知育玩具の活用: おやつを隠せるタイプの知育玩具は、猫が頭を使っておやつを取り出すことで、脳を活性化させます。
- 新しいおもちゃや匂い: 時々新しいおもちゃを与えたり、猫が安全に嗅げるアロマやハーブ(キャットニップなど)で新しい刺激を与えたりするのも良いでしょう。
- 声かけとスキンシップ: 飼い主とのコミュニケーションも、猫の脳を刺激し、精神的な安定に繋がります。優しく話しかけたり、撫でたりする時間を大切にしましょう。
室内の安全対策とバリアフリー化
老猫が安全に快適に暮らせるよう、室内環境のバリアフリー化と危険箇所の排除は非常に重要です。転倒や怪我のリスクを減らし、ストレスなく過ごせる空間を作りましょう。
段差の解消と滑り止め
足腰が弱くなった老猫にとって、小さな段差でも転倒の原因になったり、関節に負担をかけたりします。また、フローリングなどの滑りやすい床は、足腰に大きな負担をかけるため注意が必要です。
- スロープの設置: ソファやベッドなど、猫がよく上り下りする場所に緩やかなスロープを設置することで、足腰への負担を軽減できます。
- 滑り止めマットやカーペット: フローリングの上に滑り止めマットやカーペットを敷くことで、足元が安定し、転倒や股関節への負担を減らすことができます。特に、猫がよく歩く場所や、食事・トイレの周りに敷くと良いでしょう。
- 階段への対策: 階段の昇り降りが困難になった場合は、ゲートを設置して階段へのアクセスを制限するか、滑り止めシートを貼るなどの対策を検討しましょう。
危険な場所の排除
老猫は判断能力や運動能力が低下するため、思わぬ事故に繋がる危険な場所を事前に排除することが大切です。
- 高い場所からの落下防止: 高い場所への上り下りが難しくなるため、キャットタワーの段数を減らしたり、高い場所へのアクセスを制限したりしましょう。窓からの転落防止のために、網戸の補強や転落防止ネットの設置も重要です。
- 誤飲の防止: 小さなものや、猫が口にしてはいけないもの(薬、紐、観葉植物など)は、猫の手の届かない場所に保管しましょう。
- コード類の整理: 電気コードなどは、猫が噛んだり引っかかったりしないように、カバーをつけたり整理したりしましょう。
温度・湿度管理の注意点
体温調節能力の低下への配慮
老猫は体温調節能力が低下するため、暑さにも寒さにも弱くなります。年間を通して適切な室温と湿度を保ち、猫が快適に過ごせる環境を整えることが重要です。
季節 | 推奨室温 | 推奨湿度 | 対策の例 |
---|---|---|---|
夏 | 26℃~28℃ | 50%~60% | エアコンや扇風機で室温を調整。ひんやりマット、冷却ボード、保冷剤の活用。直射日光が当たらない場所の確保。 |
冬 | 20℃~22℃ | 50%~60% | エアコンや暖房器具で室温を調整。ペット用ヒーター、湯たんぽ、毛布の活用。窓からの冷気を防ぐ。 |
特に冬場は、暖房の効いた部屋とそうでない場所との温度差を少なくすることも大切です。夏場は熱中症、冬場は低体温症や風邪のリスクが高まるため、猫の様子をよく観察し、体調に異変がないか注意しましょう。加湿器や除湿器を活用し、湿度も適切に保つことで、呼吸器系のトラブル予防にも繋がります。
老猫の健康管理と病気の注意点

愛猫が老齢期に入ると、若い頃には見られなかった様々な健康上の問題が発生しやすくなります。病気の早期発見と適切な管理は、老猫が快適な生活を送る上で非常に重要です。日々の観察と定期的な健康チェックを通じて、愛猫のわずかな変化にも気づけるように心がけましょう。
定期的な健康チェックと動物病院の活用
老猫の健康を維持するためには、飼い主様による日々の細やかな観察と、専門家である獣医師による定期的な健康診断が不可欠です。
自宅でできる日々のチェックポイント
愛猫の健康状態は、日々の行動や身体の変化に現れます。以下のポイントに注目し、変化がないか確認しましょう。
- 食欲・飲水量:食事の量や水分の摂取量に変化はないか、急に増えたり減ったりしていないか。
- 排泄物:尿の量や回数、便の形状や色、排泄の姿勢などに異常はないか。トイレの失敗が増えていないか。
- 体重:急激な体重の増減がないか。定期的に体重を測定し記録しておくと変化に気づきやすくなります。
- 行動・活動量:活動性が低下していないか、寝ている時間が長くなっていないか。歩き方がぎこちなくないか、ジャンプを嫌がらないか。
- 見た目:被毛のツヤや手触りに変化はないか。目ヤニや鼻水、口臭、歯茎の異常、皮膚のしこりなどがないか。
- 呼吸:呼吸が速い、苦しそう、咳をするなどの症状がないか。
- 体温:体が熱い、または冷たいと感じないか。
これらの変化は、病気のサインである可能性があります。日頃から愛猫の様子をよく観察し、些細な変化にも気づけるようにしましょう。
定期検診の重要性
老猫は、病気を隠す傾向があるため、飼い主が気づかないうちに病気が進行していることがあります。定期的な健康診断は、見た目では分からない病気の早期発見に繋がり、早期治療によって病気の進行を遅らせたり、完治させたりする可能性を高めます。
一般的に、老猫(7歳以上)になったら年に1回以上、高齢になるほど半年に1回など、検診の頻度を増やすことが推奨されます。検診では、身体検査に加え、血液検査、尿検査、レントゲン検査、超音波検査などが行われ、内臓機能や全身の状態を詳しくチェックします。
老猫に多い病気と早期発見の注意点
老猫は特定の病気にかかりやすくなります。それぞれの病気の症状を知り、早期発見に努めましょう。
腎臓病
猫に最も多い病気の一つで、特に老猫で発症しやすい慢性腎臓病は、進行すると命に関わる深刻な病気です。初期症状は分かりにくく、進行してから気づくことが多いです。
- 主な症状:多飲多尿(水を飲む量が増え、おしっこの量も増える)、食欲不振、体重減少、嘔吐、脱水、被毛の質の低下、口臭(アンモニア臭)。
- 早期発見の注意点:多飲多尿は初期のサインであるため、飲水量の変化に注意しましょう。定期的な尿検査や血液検査で早期に異常を発見できます。
甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、老猫に多く見られます。代謝が異常に亢進するため、様々な症状が現れます。
- 主な症状:食欲旺盛なのに体重が減少する、多飲多尿、活動性の亢進(落ち着きがない、夜鳴き)、下痢、嘔吐、被毛の質の低下。
- 早期発見の注意点:「よく食べるのに痩せる」という症状は特徴的です。血液検査で甲状腺ホルモン値を測定することで診断されます。
糖尿病
インスリンの作用不足により血糖値が高くなる病気です。肥満の猫に多く見られますが、老猫でも発症することがあります。
- 主な症状:多飲多尿、多食(よく食べる)、体重減少。進行すると、元気消失、嘔吐、脱水などの症状が現れます。
- 早期発見の注意点:多飲多尿や多食は他の病気でも見られますが、体重減少を伴う場合は特に注意が必要です。尿検査や血液検査で診断されます。
関節炎
加齢に伴い関節の軟骨がすり減ったり、炎症を起こしたりすることで痛みが生じる病気です。猫は痛みを隠すのが得意なため、気づきにくいことがあります。
- 主な症状:ジャンプをしなくなる、高い場所に登らなくなる、歩き方がぎこちない、段差を嫌がる、触られるのを嫌がる、寝ている時間が長くなる。
- 早期発見の注意点:行動の変化に注目しましょう。高いところへの移動が減ったり、毛づくろいをしにくそうにしている場合は、関節に痛みがある可能性があります。
歯周病と口腔ケア
老猫の多くが歯周病を患っていると言われています。歯周病は口の中だけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼすことがあります。
- 主な症状:口臭が強くなる、歯茎が赤く腫れる、歯石が付着する、よだれが増える、口を痛がる、食欲不振。
- 早期発見の注意点:定期的に口の中をチェックし、歯茎の異常や口臭に気づいたら動物病院を受診しましょう。自宅での歯磨きやデンタルケアも重要です。
認知症
人と同じように、猫も高齢になると認知機能が低下することがあります。明確な治療法は確立されていませんが、症状の進行を遅らせるためのケアが可能です。
- 主な症状:徘徊(目的もなく歩き回る)、夜鳴き、見当識障害(トイレの場所が分からなくなる、部屋の隅で動けなくなる)、活動リズムの変化(昼夜逆転)、コミュニケーションの変化(呼びかけに反応しない、無関心になる)。
- 早期発見の注意点:これらの行動の変化は加齢によるものと見過ごされがちですが、生活の質を低下させるため、獣医師に相談しましょう。
その他の病気
上記以外にも、老猫では心臓病(肥大型心筋症など)、高血圧、腫瘍(癌)なども注意が必要です。いずれの病気も早期発見が治療の鍵となります。定期的な健康診断と日々の観察で、愛猫の小さな変化も見逃さないようにしましょう。
異変に気づいたらすぐに動物病院へ
愛猫に何らかの異変や普段と違う様子が見られた場合は、自己判断せずに速やかに動物病院を受診することが大切です。特に以下の症状が見られた場合は、緊急性が高いため、すぐに動物病院に連絡し、指示を仰ぎましょう。
緊急性の高い症状
- 呼吸が速い、荒い、苦しそうにしている
- 激しい嘔吐や下痢が続く
- けいれんを起こしている
- 意識がない、ぐったりしている
- 突然歩けなくなった、麻痺がある
- 激しい痛みを伴う鳴き声や行動がある
- 排尿が困難そう、全く出ていない
- 大量の出血がある
- 誤飲・誤食をした可能性がある
これらの症状は、命に関わる重篤な病気や緊急性の高い状態を示している可能性があります。迷った時や不安な時は、まずかかりつけの動物病院に電話で相談し、適切な指示を仰ぐようにしましょう。
老猫とのコミュニケーションと心のケア

愛猫が高齢になると、身体的な変化だけでなく、精神面でもデリケートになります。視力や聴力の低下、認知機能の変化などにより、不安を感じやすくなるため、飼い主様からの温かいコミュニケーションと、ストレスを軽減できる環境づくりが老猫の心の安定に不可欠です。
スキンシップと声かけで安心感を
猫は高齢になると視力や聴力が衰え、環境への適応能力も低下するため、不安を感じやすくなります。このような時期だからこそ、飼い主様からの温かいコミュニケーションが老猫の心の安定に不可欠です。
優しく撫でる、ゆっくりとブラッシングする、マッサージを施すといったスキンシップは、老猫に安心感を与え、飼い主様との信頼関係を深めます。特に、老猫は関節痛などを抱えている場合もあるため、触られることを嫌がる部位がないか、常に注意深く観察し、無理強いは決してしないようにしましょう。老猫のペースに合わせ、短時間でも毎日続けることが大切です。
また、優しく語りかけることや、名前を呼んであげることも大切です。声のトーンを落ち着かせ、安心感を与えるように話しかけることで、老猫は飼い主様の存在を認識し、孤独感を感じにくくなります。視覚や聴覚が衰えても、声の振動や飼い主様の匂い、温もりを通じて愛情を感じ取ることができます。
ストレスを軽減する環境づくり
老猫は環境の変化に非常に敏感で、ちょっとした変化でも大きなストレスを感じることがあります。ストレスは免疫力の低下や様々な病気の引き金となるため、可能な限りストレスを軽減できる環境を整えることが重要です。
まず、老猫がいつでも安心して隠れることができる静かで落ち着ける場所を確保しましょう。急な物音や来客から身を守れるような、猫専用の隠れ家やキャットハウスを用意してあげると良いでしょう。高い場所を好む猫であれば、昇降しやすい安全なキャットタワーや棚の上段に、柔らかいクッションを置いてあげるのも効果的です。
食事や遊びの時間をできるだけ一定にするなど、日々のルーティンを維持することも、老猫の心の安定に繋がります。急な環境の変化は避け、もし模様替えや新しい家具の導入などが必要な場合は、時間をかけて少しずつ慣らしてあげてください。新しいものが来た際は、まずは老猫が匂いを嗅ぎ、安全であることを確認できる機会を与えましょう。
多頭飼いの場合、他の猫との関係性もストレス要因となり得ます。老猫が他の猫に邪魔されずに休めるような、個別のスペースや高い場所を確保してあげることが望ましいです。食事の場所も分け、ゆっくりと安心して食事ができるよう配慮することで、無用な争いを避け、老猫のストレスを軽減できます。
困ったときは「アイムペットサービス」へ

アイムペットサービスでは、いろいろな事情でペットを飼えなくなってしまった方々と、飼育できなくなってしまったペットたち(犬、猫、ウサギ、ハムスター、鳥など)と、新たにペットを飼いたいと考えている里親希望の方々の、縁結びのお手伝いをさせて頂きます。
全国どちらでもお引き取りのご相談を受け賜ります。北海道から沖縄県の方々まで、ご対応の実績がございますので、ご安心ください。
まとめ
愛猫が7歳頃からシニア期に入り、その変化に気づくことが大切です。老猫が快適に過ごすためには、食事、トイレ、寝床、運動、安全対策、温度・湿度管理といった生活環境の細やかな配慮が不可欠です。また、定期的な健康チェックと動物病院での検診は、腎臓病や甲状腺機能亢進症など老猫に多い病気の早期発見に繋がり、愛猫のQOL維持に直結します。日々のコミュニケーションと心のケアも忘れずに行い、愛猫が最期まで幸せに、そして安心して暮らせるよう、飼い主様が寄り添い、適切なサポートを提供することが何よりも重要です。